プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期使用に関連した低マグネシウム血症は、近年注目されている副作用のひとつである。
国内外の警告で繰り返し言及されており、長期投与を行う患者では、モニタリングが推奨される。
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*発症の背景と機序
PPI関連低Mg血症の特徴は、腎からのMg喪失ではなく、腸管吸収低下に起因する点にある。
①腸管でのTRPM6/7チャネルの機能低下
マグネシウムの吸収は、受動拡散とTRPM6/7チャネルを介した能動輸送の2経路だが、PPIは腸管内のpH上昇を通じて、TRPM6/7活性を低下させ、能動的Mg吸収を抑制することが示唆されている。
②胃酸抑制によるMg溶解性の変化
食品からのMgは胃酸環境で溶解した後に吸収されるが、胃酸が減少するとMg塩の溶解度が低下し、吸収効率が落ちる可能性がある。
*腎機能は保たれる
特徴的なのは、腎排泄は正常または低下しているにもかかわらず、血中Mgが低下する
点であり、「腸管吸収不良型」と分類される。
*発症時期
多くは長期投与(平均 1〜2年)で発症。数ヶ月の短期間でも起きる症例あり。
H2ブロッカーへの変更で改善するケースが多い
*症状
低Mg血症の症状は多岐にわたり、しばしば非特異的である。
・筋けいれん・筋力低下
・疲労感・倦怠感
・不整脈
・けいれん発作
・低Ca血症(Mg低下によるPTH分泌低下)
・低K血症(ROMKチャネル異常)
低Mg+低Ca+低Kが同時に現れる例も多く、PPI関連低Mg血症を示唆する組合せとして重視される。
*どのPPIが起こしやすいか
オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールなど、PPI全体で発症が報告されており、薬剤間の差は明確でない。
重篤例はどのPPIでも起こり得る。
*治療と対応
【Mg補充】
軽度:経口Mg(酸化Mgなど)
重度:静注Mg(硫酸マグネシウム点滴)
※PPIを中止しない限りMg濃度が改善しないことが多い。
【PPIの休薬】
中止後、数日〜2週間でMg値が改善することが多い。症状改善は比較的早い。
【H2ブロッカーへの変更】
H2ブロッカーでは報告が少なく、PPIからH2ブロッカーへの変更で再発しないことが多い。
【血清Mgモニタリング】
以下のような患者では定期的な血清Mgのモニタリングが推奨される。
・1年以上PPIを使用している
・利尿薬併用
・低Ca,低Kを繰り返す
・高齢者
・腎疾患患者(軽度〜中等度)
*まとめ
PPIは安全性の高い薬剤とされるが、長期使用に伴う低Mg血症は重篤な臨床症状を来す可能性がある副作用である。
その発症機序は主として腸管でのMg吸収障害によるものであり、利尿薬併用や高齢者では特に注意が必要である。適切なモニタリングと、必要に応じたPPI中止・H2ブロッカーへの切り替えにより、多くの例で改善が得られる。
※このブログの内容は、個人的に勉強した内容をまとめたものです。添付文書や治療ガイドライン等に基づいてまとめていますが、内容の正確性は保証できません。知識の向上のため、また、内容をより良いものにしていきたいと考えているため、不適切な記載等ございましたら、コメントにてご指摘お願い致します。