クロピドグレル(プラビックス)とオメプラゾール(オメプラール)などのPPIを併用すると、クロピドグレルの活性代謝物の血中濃度が低下し、抗血小板作用が抑制されることが指摘されている。
*機序
クロピドグレルは、肝臓で主にCYP2C19により代謝活性化される。
一方、オメプラゾールは肝臓で主にCYP2C19により代謝されて不活体となる。
クロピドグレルとオメプラゾールを併用すると、CYP2C19を競合的に消費することになり、クロピドグレルの活性代謝物の生成が減少する。
つまり、オメプラゾールがCYP2C19阻害剤となるため。
*臨床上の影響
海外において、クロピドグレルとPPIの併用は心血管系イベントには影響しないとの研究結果が複数報告されたため、現在ではこの併用は問題ないと考えられているのが主流。
また、アスピリンとクロピドグレルの併用療法を受ける患者に、オメプラゾールを追加投与したところ、心血管イベントの発症抑制効果は減少せずに、消化管イベントのリスクを低下させることも報告されている。
一方で、日本人においては欧米人よりもCYP2C19の遺伝子多型のばらつきが大きいため、PPIによる影響を受ける可能性があるとの意見もある。
その反論の根拠として、CYP2C19 遺伝子多型の影響を考慮した場合においても、ランソプラゾールまたはラベプラゾール併用によるクロピドグレルの血小板凝集能抑制効果への影響は小さいと示唆する報告や、ラベプラゾールはクロピドグレルの抗血小板効果減弱を来さず、心血管イベントも増加させないといった研究報告が挙げられる(いずれも日本人を対象)。
*影響の少ないと考えられるPPI
CYP2C19の阻害作用の最も小さい、ラベプラゾール(パリエット)は、クロピドグレルの作用への影響も最も小さいと考えられる。
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