簡易懸濁法とは、錠剤粉砕や脱カプセルをせずに、錠剤・カプセルをそのまま55℃のお湯に崩壊、懸濁させて、経管投与する方法。
55℃である理由は、日本薬局方によりカプセルは37±2℃の水で10分以内に溶けることと規定されており、10分間室温で放置しても37℃以下にならない最低水温が55℃であるため。
*粉砕・脱カプセルと比べた時のメリット
・薬剤のロスや調剤者への薬剤の暴露がない。
・投与する直前まで錠剤やカプセルの状態で保管できるため、安定性が高い。
*手順
①注射器のシリンジの中に、1回服用分の薬剤を入れる。
②筒先から55℃のお湯を吸い取り、筒先にキャップをする。
②5〜10分放置してから、充分に混和する。
③そのまま注射器で経管投与する。
*55℃のお湯の作り方
沸騰したお湯やポットのお湯と水道水を2:1の割合で混ぜると約55℃なる。厳密に55℃である必要はない。
*簡易懸濁法に適さない薬剤
・徐放性製剤 ⇒ 徐放機構が壊れてしまうため
・腸溶性製剤 ⇒ コーティングが壊れ腸溶性が失われるため(管が腸まで届いているのであれば問題ない)
・添加物としてマクロゴール6000を含有している薬剤 ⇒ 温度が高すぎるとチューブ詰まりを起こすため(40℃程度のお湯で行うと問題ない)
*注意点
・使用するお湯は水道水を熱したもので問題ない。硬度の高いミネラルウォーターを使用すると、金属イオンとキレートを形成する薬剤の吸収に影響を与えるため避ける。
・長時間の放置は薬剤の安定性に影響を及ぼす可能性があるため、放置時間は10分以内とする。
・混和してからの放置も薬剤の安定性への影響が大きいため、混和は投与の直前に行う。
・フィルムコーティングされている錠剤などは10分放置しても崩壊が起こらない場合があり、そのような薬剤は錠剤を叩くなどして亀裂を入れてから行う。
・キレート形成など吸収に影響を与える薬剤や配合変化を起こす薬剤同士は一緒に行わない。
・光に不安定な薬剤は、遮光しながら行う。
※このブログの内容は、個人的に勉強した内容をまとめたものです。添付文書や治療ガイドライン等に基づいてまとめていますが、内容の正確性は保証できません。知識の向上のため、また、内容をより良いものにしていきたいと考えているため、不適切な記載等ございましたら、コメントにてご指摘お願い致します。