何らかの理由で甲状腺ホルモンの分泌が減少し、血中の甲状腺ホルモン値が低下すると、フィードバック機構により下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が増加する。
この機構により、甲状腺ホルモンが低値の状態が継続するとTSHの高値がみられる。この状態を「顕性甲状腺機能低下症」という。
一方で、甲状腺ホルモンが正常値(軽度な低値)にも関わらず、TSHが高い状態を「潜在性甲状腺機能低下症」という。
潜在性甲状腺機能低下症は、女性・高齢者で多くみられ、健常人の4~20%、人間ドック受診者の4.7%で確認されたとの報告がある。
しかしながら、TSHは平常時においても一時的に高値で観測されることもあるため、潜在性甲状腺機能低下症であるかの判断は、少なくとも1〜3ヶ月程継続してホルモン値の測定が必要。
また、「潜在性」から「顕性」へと進展する場合もある。
*原因
成人においては、慢性甲状腺炎が大半を占める。
加齢も原因の一つであり、一般に加齢に伴い血中TSH濃度はおのずと上昇していく。
海藻、ヨード卵、うがい薬などヨードを含む薬剤、造影剤などによるヨードの過剰摂取や一部の薬剤、頚部の手術や放射線治療なども原因となる。
*症状
潜在性甲状腺機能低下症の症状としては、軽度の脂質代謝異常、皮膚の乾燥や倦怠感などの甲状腺機能低下症によるものの他に、記憶力や認知機能の低下、抑うつなどの精神・神経症状がみられる場合がある。
また、潜在性甲状腺機能低下症は、脂質代謝異常を引き起こすことから、心血管疾患のリスク要因となり得る。
*妊娠・発育への影響
潜在性甲状腺機能低下症は排卵障害や月経周期のリスク要因であり、不妊のリスクが上昇する。
また、無治療で妊娠した場合、子宮内胎児死亡、妊娠高血圧症、胎盤剥離、出産前後の体調不調などのリスクがあり、子供には精神・神経障害発生のリスクが示唆されている。
*治療
治療としては、レボチロキシン(25μg-50μgの低用量から開始)の内服が行われる。
しかし、レボチロキシン投与により、医原性甲状腺機能亢進症、心房細動、骨粗鬆症妊婦などのリスクが指摘されており、また効果が得られない場合も多いため、妊娠を希望する女性、心血管リスクが高い患者、自覚症状がみられる症例、TSHが著しく高い症例(10μU/ml以上)以外(特に高齢者)には慎重に投与する必要がある。
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