アスピリンは低用量で抗血小板作用、高用量では解熱鎮痛作用を発揮する。
抗血小板作用を期待して低用量でアスピリンを服用してる患者に、鎮痛薬として高用量のアスピリンを追加服用すると、抗血小板作用が消失する可能性があると考えられている。
これをアスピリンジレンマと呼ぶ。
*アスピリンジレンマが起こる(と考えられている)理由
アスピリンは、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで血小板凝集促進作用を有するトロンボキサンA2(TXA2)の生成を抑制し、血小板凝集抑制作用を発揮する。
一方で、血管内皮細胞では、血小板凝集抑制および血管拡張作用を有するプロスタグランジンI2(PGI2)の生成を抑制し、血液凝固作用を発揮する。
アスピリンの親和性をみてみると、血管内皮細胞のCOXよりも血小板のCOXへの親和性が高いため、低用量では血小板のCOXを阻害してTXA2の生成を抑制し、血小板凝集抑制作用を示すが、高用量になると血管内皮細胞のCOXも阻害されるため、PGI2の生成が抑制されて血小板凝集促進作用が発現すると考えられている。
*抗血小板作用の至適用量は?
抗血小板作用の明確な至適用量はないが、バファリン配合錠A81のインタビューフォームによると、アスピリンジレンマを回避する至適用量は、40〜80mg/dayとされている。
さらに、TXA2の代謝物量を抑制し、かつPGI2代謝物量に影響の少ない至適用量は個人差も考慮し、40〜320mg/dayが適当であるとの記載がある。
一方で、1500mg/dayまでの高用量でも、心血管イベント低減効果に有意差はないとの報告があり、高用量でも抗血小板作用は消失せず、また増強もしないと考えられる。
*まとめ
臨床上使用される用量では、アスピリンジレンマは無影響であると考えて問題なさそう。
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