透析を受けている患者のうち、6割以上の患者が皮膚の痒み(そう痒症)を訴えるという。
そう痒症は睡眠障害を引き起こし、QOLの低下に直結するため積極的な介入が求められる。
*痒みの原因
透析患者のそう痒症は、以下の複数の要因が関わっていると考えられる。
①皮膚の乾燥による感受性の亢進
透析患者では皮膚への水分供給量低下により角層の水分量の低下がみられる。
また、皮脂腺や汗腺の萎縮による汗やセラミドなどの分泌低下も皮膚の乾燥に繋がる。
皮膚の乾燥化により、神経線維が皮膚表面まで進展し、皮膚刺激の感受性が亢進することで痒みを感じやすくなると考えられる。
②オピオイドμ受容体の刺激
中枢神経のオピオイド受容体の内、μ受容体とκ受容体が痒みに関わっている。
μ受容体が優位になると痒みを誘発し、κ受容体が優位になると痒みが抑制される。
透析患者では、μ受容体を刺激するβ-エンドルフィンの血中濃度が上昇するため、中枢性の痒みが発生する。
③カルシウム・リンなどの皮膚蓄積
透析患者では、リンの排泄が低下することで、血中リン濃度が上昇する。
その結果、二次性副甲状腺機能亢進症となり、骨吸収が亢進することで血中カルシウム濃度が上昇する。
血中のカルシウムおよびリンが過剰な状態が継続すると、皮膚組織内にリン酸カルシウムの微細な結晶が沈着し、痒みの原因になると考えられている。
また、透析では取り除くことのできないβ2-マイクログロブリンの皮膚組織への沈着も痒みの原因であることが示唆されている。
④ケミカルエディエーターの過剰産生
透析患者ではサブスタンスPやインターロイキンなどのケミカルエディエーターが過剰に産生されることが明らかになっている。
*治療薬
血液透析による、そう痒症に対しては以下のような薬剤が投与される。
皮膚の乾燥が痒みの原因となるため、保湿剤や必要に応じてステロイド外用薬など。
メディカルエディエーターによる痒みを抑制するため、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬。
過敏になっている神経を抑制する目的で、リリカ(プレガバリン)やタリージェ(ミロガバリン)。
κ受容体を選択的に刺激し、中枢性の痒みを抑制するレミッチ(ナルフラフィン)。
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